2024年大晦日、最後の配信です!前回に引き続きスペシャルゲストとして世界的に使われているプログラミング言語Ruby開発者のまつもとゆきひろさん後半をお送りします!前回と同じインタビューから、ソフトウェアフトウェアエンジニア向けの専門的な会話を抜粋してお送ります。
アメリカで初めて開かれたRubyカンファレンスの話題から始まり Ruby が辿った軌跡を振り返ります。2004年にDHHが開発した画期的なwebフレームワーク である Ruby on Rails を皮切りに Ruby は世界的に大きく認知されていき、GitHub などスタートアップを中心に採用されながら大きく発展していきます。まつもとさんはオープンソースソフトウェア(OSS)開発者としての側面もあり、まつもとさんが今の世代について感じていることや課題の話にもなりました。会話は盛り上がり、Ruby コミュニティの話や Dave Thomas・Martin Fowler・Linus Torvalds など著名な開発者との関わり、さらにまつもとさんが好きなプログラミング言語など話題は多岐にわたりました。
国内・国外問わず活躍するまつもとさん、その偉大な功績にも関わらず、その気さくな人柄が Ruby コミュニティに与えているポジティブな影響は本当に大きいと思います。まつもとさん、改めて突然のオファーにも関わらず収録を快諾いただきありがとうございました!
みなさま、良いお年をお迎えください!

リファレンス:

まつもと ゆきひろ

ゲスト:
国際登壇多数 プログラミング言語 Ruby 開発者 まつもと ゆきひろ

プログラミング言語Rubyの創始者。一般財団法人Rubyアソシエーション理事長、株式会社ZOZOやLinkers株式会社など複数社で技術顧問などを務めている。オープンソース、エンジニアのコミュニティ形成などを通じて、国内外のエンジニアの能力向上やモチベーションアップなどに貢献している。島根県松江市在住で、Ruby開発の功績から2009年に同市の名誉市民にも選ばれ、2012年には内閣府より「世界で活躍し『日本』を発信する日本人」の一人に選ばれている。通称は「Matz (マッツ)」

https://x.com/yukihiro_matz

スペシャルゲスト プログラミング言語Ruby開発者 まつもと ゆきひろ 後半 テックトーク: Ruby 発展の軌跡、今のオープンソースソフトウェアについて、Rubyコミュニティや著名なソフトウェアエンジニアとの関わり、まつもとさんの好きなプログラミング言語など

Contents


所: 最初の Ruby カンファレンスはアメリカとかですか

まつもと: そうですね。

まつもと: 2001年の11月にアメリカで開催されたのが最初のRubyカンファレンスですね。

所: その時はまつもとさん一人だけポンって日本人で行ったってことですか?

まつもと: 他にも二人ぐらい日本人来ててすごいなぁって思いましたけど。

所: コミッターとかですか?

まつもと: 当時あんまりコミッターっていう概念がなかったので、コミュニティの中で知り合いの人みたいな。

所: まつもとさん行くなら私たちも行くみたいな。

まつもと: 行きますって言って、3人ぐらいで日本人で。

まつもと: あのね、最初の Rubyカンファレンス は出席者36人ぐらいしかいなくて、今の何百人っていうカンファレンスから見ると、すごいこう吹けば飛ぶような感じだったんですけど。その中で3人日本人がいて、細々と。今日来ている Dave Thomas もいましたね

所: あ、もう!早いですね。

まつもと: えーとね、だから Dave Thomas が2000年にProgramming Ruby って本を出してくれたんですよ。

まつもと: で、その本を読んで Ruby を知った人たちが何か集まるかって言って集まった時に、えっと、ACM、アメリカのコンピューターの学会なんですけど、そのカンファレンスの直前にホテルの会議室を押さえて、そこでやろうかっていうのが最初の Ruby カンファレンスなんですね。

まつもと: だから、ほとんど人たちはそのACMのOOPSLAっていうオブジェクト指向を扱うカンファレンスの出席者で、何日か前に来て、ついでにRubyカンファレンスに出席しました、みたいな人が集まったとかだったんですよ。

まつもと: で、そのカンファレンスの時になんかRubyのパッケージシステムいるよねって言って、RubyGems のプロトタイプ作ったりとかしてましたね。

所: その時にできたんですか?

まつもと: その時に。カンファレンスのため、おかげでできた

所: へぇ。そっか、その時までなかった。あれ Perl だと CPAN

まつもと: Perl はCPANとかね、ありましたけどね。

まつもと: Rubyはこう、そういうのまだなくって、当時は2001年時点では。で、何かいるよねって。

まつもと: どういうのが、どういう機能がいるのかねって言って、こうみんなでワイワイ言いながら、こう誰か一人キーを叩いてできたのが RubyGems のプロトタイプですね。

所: それって元々は、まつもとさんが一人で作ってたんですよね。

まつもと: えぇそうですね Ruby という言語はね、はい。

所: そこから Dave Thomas が見つけたってことなんですよね。

まつもと: そうですね。97年、98年ぐらいに連絡もらって。で、なんかRuby面白いんだけどみたいな話をしてて、ちょっとやり取りしてたんですけど、99年に、えっと、どこだっけ、Addison-Wesleyの編集者の人からなんかこう、Rubyの本を書きたいって人がいるんだけどって言って連絡を受けて。

まつもと: で、著者、誰が書くの?って言ったら、Dave ThomasAndy Hunt が書きますと、その人たち知ってんじゃんって

まつもと: で、彼がガリガリとすごい勢いで書いて、そうそうそう、1999年12月31日にメールが来たんですよ。

まつもと: Y2K の時のタイミングで。で、返事書いたら、なんか Dave Thomas が、いや、じゃあ僕今から書くからねとか言って、ソースコード読んだんだけど、これどういうこと?みたいな、こういっぱいメールが来てね。

まつもと: 僕はまあ英語喋れるけど、すごい得意ってわけでもないんで。で、なんかヒーヒー言いながら英語で返事を書いて。

まつもと: そしたらその年の11月にも本が出て、すげえ早い。

所: 早い。

まつもと: で、その中、2001年の末、後半に出た本を見た人たちが、じゃあなんかちょっとこのRubyって言語面白いから、ちょっとみんなで集まろうかで集まったのが最初のRubyカンファレンスで、ちょうど出版から1年後の2001年11月ですね。

所: へー。

まつもと: で、どっちかというと、僕は英語喋りたくて喋ってるわけじゃなくて、本当は本当は喋りたくないんだけど、環境上仕方なく喋ってるって感じですね。

所: へー。さっきライブラリの例で言ったら、たぶん連絡が来たのに連絡を返さなかったわけですよ、聞いた感じだとその人は。

まつもと: もったいない。

所: もったいないですよね。そこはでも、まつもとさんは(返事を)返したと

まつもと: そうだね、返事したね。

所: そこで Dave Thomasが見つけて、それでカンファレンスが開いて、それが定期的に行われるようになって

まつもと: そうですね。2001年から毎年開かれてますね。

所: 最初、そもそも Ruby のカンファレンスみたいものが始まったってアメリカなんですか?

まつもと: カンファレンス、そうですね、世界最初のカンファレンスは2001年のRubyアカウントですね。

まつもと: えっとね、一応その日本でもそのイベントみたいな形で、まあ冗談っぽくね、Rubyカンファレンスみたいな感じの名前のついた勉強会みたいなことはしたことはあるんですけど。

まつもと: でも、当時まだRubyはドマイナーだったので、毎年開かれるようなレギュラーのカンファレンスとか開かれるみたいなこと誰も信じてなくて、えっと、でまあ冗談ぽく言ってた、1999年とか2000年とかにはそういう感じでイベントを日本でもやってたんだけど、レギュラーで行われるカンファレンスとしてはRubyカンファレンスが2001年の最初ですねなんて。

所: そこから (Ruby on) Rails が来たのが、

まつもと: 2004年ですね。僕、休んだんですよ。子供が生まれるからって言って。

まつもと: で、そしたらその年に DHH が Rails の発表してて、僕は聞き逃したんですけど、すごかったよって行ってた人に教えてもらって。

まつもと: で、それから2005年、2006年ぐらいで Rails がすごい話題になって。

まつもと: で、そうね、それから2011年、12年ぐらいまでは、まあなんか、頂点っていうかね、人気のピークみたいな感じの時代が続きましたね。

まつもと: ありがたいことです。その年にだいぶRubyが広まりましたよね。

所: うんうんうんうん。

所: あの最近、Honeypot っていう YouTube のチャンネルというか、会社かな、ベルリンの会社なんですけども。

所: で、そこがそのドキュメンタリーを撮っててNode.js とかもそうだし、React.js とか Kubernets とか作った人とかにどうなの?って聞いて、その中に Rails も出てきてて

まつもと: ああ、ドキュメンタリーって言ってた。僕、ブクマクだけしてまだ見てないんですよ。

所: で、それでDHHが当時のことちょっと言ってて、当時は別にRuby書いていたわけじゃなくて、でもRubyを見て日本人の誰かが作ってる言語だよって言って、それ見てなんか結構ビビったみたいな。

所: こうなんかこうこれで動くの?みたいな。 Pseudocode (疑似コード) みたいな感じがする、みたいな

まつもと: Pseudocode ね。はいはいはい。

所: そうですね。って感じで言ってたりしてて。もう結構恋に落ちたみたいな感じで、言っちゃえば、日本語で言えば。

まつもと: ありがたいですよね。

まつもと: あの彼、もともとPHPプログラマーで、なんだけど、Basecamp のお手伝いっていうプロジェクトのお手伝いをしてる時に、Jason Fried っていう元々Basecampやってた人と、PHPのやり方について議論して、こうしたらもっといいこと書けんじゃないの?

まつもと: みたいな話をした時に、じゃあこれでいこう、プロジェクト始めようかって言った時に、じゃあPHPだとちょっと将来的に限界がありそうだからRubyにしようよって押し切ってRubyにして、その Basecamp の下半分をこう、切り出してきて作ったのが Rails だって言ってたから。

まつもと: で、DHH覚えてる方がわかんないんだけど、僕、2001年に、 Rails よりもだいぶ前に、DHH会ってるんですよね。

所: へー!

まつもと: で、えっと、あのデンマークの Arbus という町で、JAOO(現 GOTO) っていう Java Object Oriented っていうテーマのカンファレンスが開かれたんですけど、その時に彼が学生ボランティアで来てて。

まつもと: で、懇親会の時にすごい若いのが来て、僕と多分 Dave Thomasもいたと思うんだけど、DaveThomasと一緒に話をしてる時にやってきて、なんかちょっと議論をした覚えがあるんだけど、言語について。

まつもと: で、その彼が何年か後にRubyやってて。

まつもと: Ruby の前にもね、いくつかDHHプロダクトっていう感じで作ってたんだけど、なんかWIKIエンジンとかで、その後Railsを作って、なんかすごいなあという感じではありましたね。

所: Ruby自体はもちろん言語としてもそうだけども、言っちゃえばそのキラーアプリというか Rails が登場して、そこからの流れってすごかったと思うんですよ。

所: もう、それこそ世界的な話でブームになってたし。それこそたぶん、(カンファレンス等に)呼ばれる頻度とかも全然変わってきた?

まつもと: 頻度はね、あんま変わんない。

まつもと: 2001年から2019年までコロナの前までだいたい年間5、6回なのはずっと変わらないんで、ほぼ毎年、年間5、6回くらい

所: 年間5、6回ぐらいってでも、2ヶ月に一回ってことですよね、結構な頻度 笑

まつもと: 結構な頻度ではあるね笑

まつもと: 2001年から始まって2001年が1、2、3、、2001年は3回かな。で、2002年からあとずっと年間5、6回がずっと続いてた

所: それで2001年がさっきの(Ruby カンファレンス)が出て、2004年に DHH が出てきて

まつもと: そう、2004年に DHH が Ruby on Rails を開発して、はい。

所: で、(Rails が)流行って。バーンって流行ったのは1分動画 (15分動画)作った時ですよね?

まつもと: ああ、そうですね、あのなんかTODOアプリケーションを作るっていう動画を上げたのが、多分あれが2004年の後半か2005年か。

まつもと: そう、あの頃ね、あんまりビデオっていうのは一般的じゃなかったんですよね、まだ YouTube なかったし。

まつもと: で、その時にビデオを上げてね。で、こう、まあ何て言うの、あっという間にアプリケーションができる。

まつもと: で、何にもないところから、そのTODOアプリ、TODOだったかな?、を作るまで15分ぐらいで終わって、それもなんか練習して、これってこうですとかってここに準備できたものがありますみたいな、料理番組とかじゃなくて、

まつもと: これどうやるんだったっけ?とかなんとか、なんか独り言を言いながら作ってて。

まつもと: で、それで15分でTODOアプリができるのは、ちょっとやっぱり当時の我々にとってはだいぶ衝撃的で。

まつもと: で、それはね、すごい広まる理由の一つだったんじゃないかなと思って。

所: そうですよね。それで火がついて、実際に会社が使って、特にやっぱスタートアップのブームっていうのが。

所: それで火がついて、実際に会社が使って、特にやっぱスタートアップのブームっていうのが。

所: この間、僕、その GitHub の Co-founder の人が今ベルリンに住んでて、で。

まつもと: だれ? Tom (Preston-Werner) ?

所: Scott (Chacon)です

まつもと: Scott の方か。

所: 元CTOですかね。

まつもと: かな

所: Tom も来てました

まつもと: あ、そうなんだ

所: で、それで、 The Merge っていう、デベロッパー向けのカンファレンスみたいなものを、この間、数カ月前にやったんですよ。

所: で、その時にさっき話したの HerokuAdam (Wiggins) も来てたし、 GitHub も来てたし、結構当時の、当時というか、あの辺の流れを作ってた人達ってのも結構いて。

所: で、なんかね、結構面白かったんですよね。ブースも企業ブースがなかったんですよ。OSSブースだけ。HomeBrew とかプロジェクトとかだけがブースを構えてて。

まつもと: そうなんだ。

所: で、あとDOOM、あのDOOMの開発者、あの、

まつもと: 名前忘れたけど、はい。

所: あのぼくも忘れて (注: John Romero でした)、すごいあのコアなトークをしてて、どうやって作ったかみたいな。

所: そのほかにもブースとかがDoomブースとかがあって、勝ったらその彼と最後に対戦できる!笑

まつもと: そうなの笑

所: で、その時の話とかもしてて。で、何だろう、何かその、僕はその時にちょうど学生で、ちょうどその頃の(Ruby)ブームをめちゃくちゃ見たんですよ。

所: で、あと別にRubyだけじゃなくて、その時だとオープンソース(ソフトウェア)ってもうめちゃくちゃ花開いてたと思うし、それがスタートアップっていうものも当然流行っていたし、Rails なんかも代表的だし

所: そこに GitHub が生まれて、そこで GitHub が Rails を持ってきたみたいな話とかもあって、その辺の話とかもやっぱりしてて。

所: なのでなんかちょっと、なんか言いながら、なんか何を話していいのかって笑

まつもと: 普段の客層にはなかなか聞きなれない話が。

所: まあ自由にやれば、離脱しちゃうだけだけど、まあ笑 話とかもトピックも濃くなってくると刺さる人に刺さるけど、だんだん (万人受けはしなくなる)

まつもと: どうしてもそうなるよね

所: そうなりますよね。そこはもう選択だな、と。

所: で、その時の、流れみたいなものを感じて、なんかね、ちょっと懐かしかったんですよね。

所: 僕が見た時、あの時見てたのって、これだったよなっていう。そのRubyだけじゃないっていうか。まつもとさんももう一つの顔というか、OSS開発者、オープンソースの開発者っていうのが結構あるじゃないですか。

まつもと: そうですね。

まつもと: 最近はあんまり目立ったことしてないけど、まあオープンソースソフトウェアってなんぞや?っていう話、わかってもらえない時代が長かったので、その時にはですね、まあ実際に自分でオープンソースソフトウェアを作っている経験者として、こんなこと、こんな性質があります、こんなことを狙ってますみたいなことを話す機会は多かったですね。

まつもと: 2000年、そうですね、うん。 2000年代初頭ぐらい、2010年ぐらいまでの頃はですね、割とオープンソース全体について話すことも結構多かったですよね。

所: なんかそのブームも感じたんですよね。今回そのイベントを見てちょっと思いました。

所: その時にその(オープンソースの)流れを汲んでいるというか、その当時の。

所: カンファレンスとしてはデベロッパーエクスペリエンスとかって言ってましたけど、開発者ドリブンというか、けっこう思想的な面もありますよね、その自由度というか。

まつもと: そうですね、はい。

所: その上で自分たちで作っていく。それで、実際に変えていった。

まつもと: そういうその現代、今になって、例えばここ最近になってそのソフトウェア開発に関わりましたみたいな人たちとってみてると、オープンソースソフトウェアってあまり珍しいものでもなんでもないんですよね。もう既にあるので。

まつもと: で、例えばだから、その、その自由に対してどうこうとか言うんじゃなくて、あるもの使えばいいやっていう感じになってしまうので、そういう意味でのこうなってる、ある種後継者問題みたいなものって発生しがちですよね。

まつもと: つまりそのオープンソースソフトウェアの思想みたいなものも含めて、受け継いでくれる人がどのぐらい若い人の中にどのぐらいいるのかなっていうのは、若干の心配はあるのはある。

まつもと: つまり、例えば Ruby も最初作ったのは30年も前ですし、Python もそう、Apache もそう、PHPもそう、Javaも、Javaは厳密にはオープンソースじゃないけど。

まつもと: で、そういうたくさんあるオープンソースソフトウェアって多くのものなかに、例えば20年前、30年前作られたものって結構あるんですよね。あるいはもっと前に作ったのもあるんですよね。

まつもと: で、それらを、まあオープンソースソフトウェアでずっとあるから使ってるって人たちが多いんだけど、でもその、例えばこれから先10年、20年、30年先のことを考えると、今もオープンソースソフトウェアってどんどん生まれないといけないはずなんですよね。

まつもと: なんだけど、その、例えば20年前に作られたものを当たり前として受け取って、受け取るだけでお客さんで終わってしまうと、新しいオープンソースソフトウェアをその思想まで受け継いで作るって人はちょっといないかもしれないなという風に思って、若干の不安もありますよね。

所: 特に最近はなんかあれですよね、オープンソースだったけど、またクローズドにするという流れも

まつもと: そうですよね、なんか何がどこまでオープンなの?みたいなやつもありますよね。

まつもと: 例えばまあなんかAI関係のやつとか。オープンソースAIとか言うけど、もうソースコードの一部しか公開されてないよねとか、元になったデータは公開されないから再現性がないよね、みたいなのはそれオープンソースってほんと言っていいのかな?みたいなのはありますよね。

所: そっか、まつもとさん的には、今の流れってのは、その10年前とか、そのさっき言ってた時ってその流れがすごい大きかったと思うんですよ、オープンソースの力っていうか。

所: それが今、やっぱり戻ってってるっていうか?

まつもと: そうですね、まあ当たり前になってしまったがゆえに、インターネット検索すればタダで使えるソフトウェアとしていくらでもあるわけですよね。

まつもと: だけど、そのそれぞれのタダで使えるソフトウェアの中には、後ろで誰か作ってる人がいて、で、その人たちは霞を食べてるわけにはいかないので、どこかでスポンサーを確保して、こう生活を維持するみたいなことを同時にやってるわけですよね。

まつもと: だけど、使ってる人からそれは見えないじゃないですか。

まつもと: そうすると、何もしなくても、いつでもオープンソースソフトウェアは手に入るんだなって思ってると、どこかで死滅するかもしれない。

所: はいはい。こういう話は、例えば海外とかでやりとりもしたりするんですか?

まつもと: こういう話は積極的にはしないですけど、話がオープンソースの話になったときにはすることもありますよね。

所: 全然なんか違う方で、例えば Linus (Torvalds) とかって、もうめちゃくちゃこのこの文脈にいる方で

まつもと: 僕、Linus とほとんど会ったことないので。

所: そこは、そうなんですね。

まつもと: なんかすれ違いで、ちょっと挨拶したぐらいのことしかないので。彼が日本に来た時かな、すれ違ってRubyの開発者でよろしくって挨拶するのがでも20年ぐらい前かな、よろしくって言ったぐらいで。

まつもと: なんか Linus がその GitHub の、まあ彼が Git 作って、で、その周りに GitHub ってサービスができた時に、で、彼は何かのトークの時に Ruby people weird(strange) people って言ってて。

所: え、なんですか?

まつもと: Ruby people weird people って言ってて笑

まつもと: これはポジティブな意味で新しいことにいろんな変なことも含めて新しいこと挑戦するってニュアンスだったんだけど、で、まぁそういう風に認識してもらえたら嬉しいなっていうか。

所: へー、面白い。

所: こないだそのTom, GitHub の Tom と話した時に、Tom は Linus に敵呼ばわりされたらしいんですよ。

所: Git はあえて複雑で難しくして、コミットのハードルを上げといておきたかったらしいんですよ。GitHub がそれを簡単に使えるようにしたから、「お前らは敵だ」みたいなこと言われたって言ってて。

まつもと: うーん、簡単にしたからかー。いや、どっちかっていうとその、あの、何て言うの、Linus 的にはピア・ツー・ピアのディストリビュートシステムを作りたかったと思うんだよね。

まつもと: だから Git そのものは、個別のローカルリポジトリあるわけじゃないですか。それをこう、あの人のローカルリポジトリに突っ込むとか、その人のローカルリポジトリで使うとかで、あのリリース用にはこのリポジトリにアクセスしに来てねみたいな、完全な対称性のあるピア・ツー・ピアのシステムにしたかったという風な Git の仕様だけ見るとそんな感じがするんだけど、GitHub って中央集権じゃないですか。

まつもと: 中央の GitHub っていうサービス見に行くでしょ、毎回。せっかくそのディストリビュートシステムを作ったのに、GitHub がそれを中央集権に戻してしまったから。まあそういう意味で言うと、そのLinusの思想的には敵だなっていう風な印象はあるかもしれない。

所: 面白い。しかも GitHub はクローズドっていうか

まつもと: そうそう、オープンソースソフトウェアじゃないんだよね

所: GitLab はそうだけどみたいな。

まつもと: GitLab はオープンソースソフトウェアだよね。

所: そうですね。確かに、確かに。

まつもと: Linus 的にはそっちのは気に入らないんじゃないかなとは思うんだけどね。

所: そっか。あとオープンソースって言ったら Martin Fowler とか Thoughtworks も結構オープンソース好きですよね。

まつもと: 大好きですよね、はい。 Martin Fowler は何度も Ruby カンファレンス来てくれてるし。

所: ああそうなんだ。

まつもと: あのよくある MINASWAN ってスローガンあるじゃない?あれ最初に言ったのは彼だと思うんだよね。

所: Martin Fowler 名付けヤバいですね。

まつもと: 名付け能力高い。で、たぶん 2015年でデンマーク開かれた時のカンファレンスの時のディナーの時に、 Ruby ピープルはすごいナイスでなんとか、みたいなこと言ってたのが、ベースになってると思うんだけど。

所: ちょっと面白いですね。Linus のこの weird っていう褒め方と、Martin のナイスていう褒め方と。

まつもと: Martin はナイスって褒めてくれる。それはそのコミュニティがそのアクセプタブルで、フレンドリーだっていうことを意味してて。

所: ああ、でもそれは感じます。

まつもと: 他のそのオープンソースソフトウェアのコミュニティに比べて、Rubyのコミュニティはオープンでナイスでフレンドリーだ、みたいなこと言ってましたね。

所: いや、それは、本当に僕それ感じます。コミュニティの癖というか、やっぱいろんな言語、このちょっと前に話してましたけども、どういう会社の人が使ったりとかすることによって、そのコミュニティの質が変わるっていうか。Rubyはまつもとさんが完全に最初から作ってるし、っていうか、まあまつもとさんよくなんかなんで流行ったのかわかんないぐらいのこと話してるくらいな。

所: なんだろう、まつもとさんの、英語で言ったらハンブルみたいな感じだろうし、すごい低姿勢な感じとかが、僕は Martin Fowler にめちゃくちゃ同意するっていうか、コミュニティの形を作ってる。で、なんかやっぱり、僕今でもRubyコミュニティがすごい好きですね。こうして今でも来てるし、EuRuKo にも。

まつもと: ありがとうございます。

まつもと: うーん、まあまあいろいろあるんですけど、まあまあ日本人が少なくとも表面的にはナイスである傾向が高いってのが一つあると思います。

所: さっき、ちょっと聞かれてましたよね。

まつもと: 何がどういう背景があってそうなってるかよくわかんないけど、まあちょっと腰が低い点で謙遜な感じがするっていうのは日本人的特質ってのもあると思うし。

まつもと: もう一つは、カンファレンスだと必ずキーノート(基調講演)するじゃないですか。

所: そうですね。

まつもと: みんなRubyを褒めてくれるんだけど、なんかね、すごい居心地悪いんですよ。

まつもと: あれ何かっていうと、あの インポスターシンドロームって聞いたことあります?

所: わかります。えっ、 Matz (まつもとさんの愛称) でも!

まつもと: あのなんか成果を上げると、いや自分はその評価にふさわしくないんじゃないだろうか、みたいなことを感じるわけですよね。

まつもと: そういうのをインポスターシンドロームというわけなんですけど。なんでRubyはこんなに素晴らしいの?ってなったら、いや、わからんっていうのは、やっぱそういうのが背景にあるわけですよね、内心。

まつもと: うん、そこまで褒められることした覚えはないし、オリジナリティもそこまででもないしな、なんでだろうねみたいな。で「運です」って答えるわけなんですけど。

まつもと: で、そういうのが、えっとまあ、なんだろう、ちょっとその、こうハンブルで見られるときの背景にあるのかなと。

所: なんか今のだけ聞くと、自信ないみたいな。

まつもと: いや、押しの強い人いるじゃないですか。俺がすごいから、俺が素晴らしいから。そういう感じになれないんですよね。

所: 面白い。それってちょっと言っちゃあれですけど、DHH とかとは違うスタイルですよね。

まつもと: そうですよね、DHH押し強いもんね。

所: 強めですよ。

まつもと: いや、あの人、あのカラーは大事だと思うけどね。

所: そうですね。

まつもと: まあ、だから僕のカラーだけだとやっぱりポピュラーにはなれなくて。

まつもと: で、やっぱ DHH が Rails をガーッと押してくれたおかげで Ruby も引っ張られてなったっていうのは、多分にあると思うんですね。

まつもと: 実際にその Ruby on Rails 以前のRubyって、まあまあいい言語かもしれないけどパッとしないね、みたいな印象の方が強かったと思うし。

まつもと: うーん、それは僕の押しの弱さが原因だったような気もする。

所: でも、あの Dave Thomas、今回も来てますけど、10年前にその日本にワークショップに来たことがあって、僕、その時にワークショップ行ったんですよ。

所: で、そして夜、飲み会に行ったんですけど、なんか全然人が来なくて、たぶんみんな英語が喋れないからと思うんですけども。

まつもと: もったいない。

所: もうすっごい(小さい) 4、5人ぐらいのテーブルですよ。

所: で、Dave Thomas が、なんかちょっと印象的だったのは、もちろんDave Thomas いろんな言語知ってるじゃないですか。

所: でも、Rubyはなんか今でも友達みたいな感じがするって言ってて、今でも新しい新鮮な気づきとかあったりするって当時言ってて。今回またどんな話するのかな、ちょっと楽しみ。

まつもと: そうね、いろんな言語について話すみたいなこと言ってたんだけど。Matz も知らない言語もいくつかあるよみたいなこと言ってて。そうかどんな言語を紹介してくれるのかなって楽しみにしてる。

所: Matz ってもともと、どっちかってプログラミング言語オタクというか、めちゃくちゃいろんな言語を知ってて。

まつもと: そうね。なんだけどまあ彼もね、人のこと言えない笑 彼もだいぶ言語好き、大好きな傾向だから。僕も知らないだろうっていう言語をですね、いくつか紹介するって言ってましたね。

所: へー!

所: あ、まつもとさんが一番好きな言語ってなんですか?

まつもと: 好きな言語? えっと、なんだろうね。

まつもと: えっと、言語仕様として一番好きなのはやっぱりRubyで、自分が好きなように作ってるから。ちょっとしがらみがあって変えられない部分があるのが、ちょっと気に入らないのは気に入らないんだけど。

まつもと: まあでもトータルで言って一番好きな言語はまあRubyが一番好きで。

まつもと: で、ただプログラマーとして使いたい言語っていうのは、C(言語)の方が多いかもしれない。Cプログラマーなので、長年の。何十年来のCプログラマーなんで。

まつもと: C++ はね、プログラムしたことあるけど、ちょっと勘弁してほしいなって感じで、なのでCの方が好きですね。

まつもと: で、えーっと、あとは仕様的な観点から言うと、SmallTalkLisp っていうのが、まあ先輩としてね。こう参考にできることがたくさんあって。アイディアの宝庫みたいな感じで。どっちかっていうとあそこら辺にいって、アイディアをもらってきて Ruby に取り込むみたいなケースは多いんですけど。

所: いや昔 Ruby は MatzLisp って

まつもと: よく言われてましたね。そうそう。

まつもと: 2005年ぐらいどっかのイベントのネタらしいんですけど。どっかのイベントの二次会で出たネタらしいんですけど。あのまあパロディになってて。昔 MaclispっていうLISPがあったんですよ。

まつもと: で、それをもじって MatzLisp ってことらしい。

所: へーそうなんだ。

所: 今回ちょっと来てますけど RSpec の作者 Steven (Baker) っていう、前回の EuRuKo でリトアニアでキーノートしてたんですけども。その人はポロっと、まあ本題じゃないんですけども、この世でパーフェクトな言語は2つしかない。 Lisp と SmallTalk って言ってた気がする。

所: 今、同じようなことを(まつもとさんも言ってる)、言語仕様で言ったら。

まつもと: そうだねー。SmallTalk はね、パーフェクトだとは思わないけど、まあ尊敬すべき言語ですね、僕にとってはね。

所: いやー、触ったこと無い。僕はもう Ruby チルドレンです、Ruby育ちです。

所: あーなんかすげえ、もっとなんか 海外移住channel 関係なく色々話したい笑

まつもと: すごい、なんか海外移住の話、最初ちょっとだけでしたね笑

所: そうですね笑

まつもと: 英語の話、若干したよなって思うけど、それからあと全然Rubyの話ばっかりでしたね。

所: そうですね。まあ無理やり、無理やり最後じゃあ戻ってくるという感じに笑

まつもと: よし、戻そう、英語の話に戻そう!

所: そうですね笑 そのその、今までこの Ruby の….


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