今回のゲストは、アメリカ・シアトル在住のGoogleソフトウェアエンジニア、岩尾 エマ はるかさん。キャリアのスタートは日本の大手メーカーでの組み込み開発。そこからスタートアップや外資系企業を経て、Google東京オフィスに転職。さらに社内異動でアメリカへ渡り、現在はグリーンカードを取得して現地で家族と共に暮らしています。
大学時代にはコンピュータサイエンスへの転部を経験し、「好きなことを仕事にする」葛藤を乗り越えてエンジニアとしての道を歩み始めた岩尾さん。日本企業から外資への転職、そして google に辿り着いたあとも社内ネットワークを活かした移動など、ユニークで着実なステップを重ねてきました。
また、アメリカへの移住では、L1駐在ビザを経てスムーズにグリーンカードを取得した経験や、ビザ制度に関するリアルな知見、LGBTQ+当事者としてのアメリカと日本の違いなど、多様な視点が語られます。「海外で働いてみたい」「エンジニアとしてのキャリアに迷っている」──そんな方にとって、多くのヒントが詰まったエピソードです。

ゲスト:
アメリカ・シアトル 7年目 Google ソフトウェアエンジニア 岩尾 エマ はるか
大阪府出身。組み込み開発業務などを経て 2015年に Google に入社。現在は同社シアトルオフィスにて Google Cloud の SRE (Site Reliability Engineering:サイト信頼性エンジニアリング)チームに所属し、システムの信頼性向上、運用の自動化に取り組む。自身の夢でもあった円周率計算の世界記録を2019年と2022年に樹立した。趣味はゲームと旅行。
移住の時の手続きをまとめたブログ https://seattle-life.hatenablog.com/
ゲストQ&A
移住全般について
- 移住先はどこですか・どこでしたか?
- アメリカ・シアトル
- その場所を選んだ理由はなんですか?
- アメリカ国内の候補地はシアトル、サンフランシスコ、ニューヨークだったのですが、上司がシアトル勤務だったこと、住みやすそうだったこと、日本への近さ、物価など考慮して決めました。
- いつから移住先に住んでいますか・いましたか?
- 2018年12月頃
- いつまで移住先に住む予定・住んでいましたか?
- 永住権を取ったので、期間を気にせずに楽しいと思える間は住んでいたいです。
- いままでの海外遍歴を教えてください
- 小学校や中学校の時に、家族旅行でオーストラリアやアメリカに行ったことがあります。大学1年の時にヨーロッパに3週間バックパック旅行をしたのが一人旅の始まり。DevRel の仕事をしていた時は毎週飛行機に乗って主にアメリカ、東アジア、ヨーロッパ出張をしていました。40カ国ぐらいに行ったことがあります。
- 移住前の英語・現地語のレベルはどうでしたか?どうやって勉強しましたか?
- 自分では話せるつもりでしたが、今と比べると全然でした。資格は TOEIC 990 (2016年)と英検一級(大学の時)を持っていました。日本の学校の勉強と、中学から高校でオンラインゲーム(AoE, PSO, DAoC)を英語で海外の人とプレイしたり、パッチノートを日本語に翻訳するサイトを運営したり、大学の時にアニメニュースの翻訳バイトをしたりしたのも役に立ちました。
- なぜ海外に移住したかったんですか?
- ソフトウェアエンジニアの本場で、キャリアの選択肢が多そうだったからと、お給料が日本と比べて良いことが大きいです。あとはかっこ良さそう、というのもありました。
- どうやって移住を実現しましたか?
- Google の DevRel にいた時に、シアトルにいたマネージャーに相談すると OK が出たので、駐在ビザ(L-1A)で異動しました。そのまま永住権(グリーンカード)の申請を会社経由でしてもらって、2021年に取得しました。
- 海外移住してよかったことはなんですか?
- お給料が上がって、物価を考慮しても可処分所得が増えました。シアトルはアジア人も多くて、アジア食材も普通に手に入りギャップが少ないです。同性婚が法的に認められていること、ワシントン州では LGBTQ+ への差別が法律で禁止されていることも住みやすいと感じます。
- 海外移住して大変なことはなんですか?
- 学生時代の友人のような、仕事以外の知り合いの少なさがさみしいです。
- 将来的に他の国への移住も考えていますか?また、それはどうしてですか?
- ヨーロッパ(イギリス?)には住んでみたいです。ヨーロッパに旅行で行きやすそうだから…。 将来は日本に戻っても良いかなと思っています。言葉が通じるし、家族も昔からの友人も日本にいるからです。
仕事について
- 職業は何ですか・何でしたか?
- ソフトウェアエンジニア
- 職業の種類を教えて下さい
- 現地就職(現地企業)
- どうやってその仕事を見つけましたか?
- 日本で就職活動をして、東京オフィスに入社しました。その後社内異動でアメリカ法人に転籍しました。
- 海外で働いてみてよかったことはなんですか?
- お給料が上がったこと、本社の開発チームと時差がないのでコミュニケーションが取りやすいこと、漠然と持っていた「アメリカではこう開発していそう」というのがもっと高い解像度で理解できたのも良かったです。
- 海外で働いてみて大変なことはなんですか?
- 言葉や文化は未だに苦労します。アメリカで小さい頃に流行っていたテレビ番組や歌手などの話はついていけません。もともと英語を読むのには慣れていたつもりでしたが、福利厚生の手続きなど、細かいところで日本語の案内に助けられていたということに気づきました。
- 日本でやってきたことで、海外でも役に立ったと感じる経験やスキルがあれば教えて下さい
- コンピュータサイエンス、ソフトウェア開発の専門スキルはそのままアメリカで通用しました。私が移住できたのは、英語が話せたからより、専門スキルがあったからだと思います。
- 逆に、日本でやってきたことで、海外では役に立たなかったと感じる経験やスキルがあれば教えて下さい
- 特にないです。
- 海外でキャリアを構築する上で特に意識していることがあれば教えて下さい
- 日本以上に「これがしたい」と自分で明確に言っていかないと取り上げてもらえないので、積極的に要望を言うようにしています。
- 将来的に日本に帰国し働くことも考えていますか?
- はい。場所にかかわらず一番楽しそうなことに取り組みたいです。
子育てについて
- 海外での出産ではどうでしたか?
- アメリカで妻が出産しました。日本の経験がないので比較はできませんが、病院の体制も手厚くてスムーズでした。出産後の退院が早い(2泊)のが体には大変そうだと感じました。
- 子供の人数と年齢を教えてください
- 1歳
- 海外での子育てについて、どのように感じていますか?
- 日本の学校制度は自分が経験していたのでわかるのですが、アメリカは知識がないので、きちんと子どもに機会を与えられるかに気をつけています。日本語と英語を両方を好きになってもらいたいと思うので、どうすれば良いか悩んでいます。母が二人いるということが社会として受け入れられているところは、医療機関や保育園に行っても当然のように対応されて過ごしやすいです。